コロナ禍でオンラインイベントが急速に普及する中、リアル会場とオンライン配信を組み合わせた「ハイブリッドイベント」という新しい形式のイベントが注目を集めています。この記事では、ハイブリッドイベントの特徴、メリットと課題、活用シーンや実施パターンなど、ハイブリッドイベントを成功に導くためのポイントを詳しく解説します。ハイブリッドイベントとはハイブリッドイベントとは、会場参加とオンライン参加を併用したイベント形式のことを指します。つまり、実際の会場に来場する参加者と、インターネットを介してオンラインで参加する参加者が共存するイベントです。ハイブリッドイベントの普及背景ハイブリッドイベントが普及した背景には、コロナ禍での社会変化があります。感染拡大防止のために対面でのイベント開催が制限される中、オンラインでの開催が急速に広がりました。しかし、完全なオンライン開催では対面ならではの臨場感や一体感が得られないという課題もありました。そこで登場したのがハイブリッド形式です。Peatix社の調査(2021年)によると、実に78.3%の主催者がアフターコロナでハイブリッド開催を検討しているとのことで、ハイブリッドイベントのニーズの高さがうかがえます。リアルイベント・オンラインイベントとの違いイベントの開催形式は大きく3つに分類できます。リアルイベント:会場参加のみオンラインイベント:オンライン参加のみハイブリッドイベント:会場参加+オンライン参加ハイブリッドイベントの最大の特徴は、会場とオンラインの両方の良さを活かせる点にあります。会場の臨場感を大切にしつつ、遠方の人でも気軽に参加できる点が魅力です。ハイブリッドイベントのメリットここでは、ハイブリッドイベントのメリットと課題について詳しく見ていきましょう。参加アクセシビリティの向上ハイブリッドイベントの大きなメリットの一つは、参加アクセシビリティの向上です。オンライン参加を可能にすることで、地理的な制約や時間的な制約を受けずに、より多くの人がイベントに参加できるようになります。例えば、遠方に住んでいる人や、仕事や家庭の都合で会場に来られない人でも、オンラインでイベントに参加することができます。これにより、イベントの参加者層が大幅に拡大し、多くの視点や意見を取り入れることができるでしょう。会場キャパシティの制限緩和と臨場感の共有ハイブリッドイベントのもう一つの利点は、会場のキャパシティ制限を緩和できることです。オンライン参加を受け入れることで、物理的な会場の収容人数に縛られずに、より多くの参加者を獲得することができます。また、会場の臨場感をオンライン上で共有することも可能です。カメラワークや音響設備を工夫することで、オンライン参加者も会場の雰囲気を感じられるようにすることができるでしょう。リアルとオンラインの参加者が一体感を持ってイベントを楽しめることは、ハイブリッドイベントの大きな魅力の一つと言えます。緊急時の開催方式変更への対応ハイブリッドイベントは、緊急時の開催方式変更に対する柔軟性も備えています。例えば、自然災害や感染症の流行などで会場開催が難しくなった場合でも、オンライン開催に切り替えることで、イベントを予定通り実施することができます。予期せぬ事態が発生した際にも、イベントを中止せずに開催できることは、主催者にとっても参加者にとっても大きなメリットになるでしょう。ハイブリッドイベントの抱える課題ハイブリッドイベントは、アクセシビリティの向上や柔軟性の高さなど多くのメリットを持つ一方で、運営負荷の増加やオンライン参加者の体験設計など、克服すべき課題も存在します。運営負荷の増加と配信技術の複雑化一方で、ハイブリッドイベントには課題もあります。その一つが、運営負荷の増加です。会場運営とオンライン配信を同時に行う必要があるため、スタッフや機材の手配など、従来の対面式イベントに比べて準備や運営に手間がかかります。また、配信技術の複雑化も課題の一つです。オンライン参加者にイベントを楽しんでもらうためには、安定した配信環境や高品質な映像・音声の確保が不可欠です。配信トラブルを防ぎ、円滑なイベント運営を実現するためには、専門性の高いスタッフや設備が必要になるでしょう。オンライン参加者の体験設計と双方向コミュニケーションの実現ハイブリッドイベントでは、会場参加者とオンライン参加者の体験に差が出てしまう点が問題とされています。そのため、両者の体験に大きな差が生じないように、コンテンツや進行を工夫することが大切です。また、双方向コミュニケーションの実現も大きな課題の一つです。オンライン参加者が受動的な視聴者にならないように、チャットやQ&Aなどの機能を活用して、積極的に参加できる仕組みを作ることが求められます。オンライン参加者も会場参加者に近い体験ができるようにイベント設計を立てることが理想でしょう。ハイブリッドイベントの主な活用シーン続いては、ハイブリッドイベントの主な活用シーンを3つ紹介します。それぞれのシーンでハイブリッド形式を取り入れることで、どのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。ビジネスカンファレンス・ユーザーイベントビジネスカンファレンスやユーザーイベントは、ハイブリッドイベントの代表的な活用シーンの一つです。会場の臨場感を大切にしつつ、オンラインでの参加も可能にすることで、より多くの人に情報を届けることができます。例えば、会場参加者とオンライン参加者が一緒にセッションを聴講し、双方向のコミュニケーションを取ることで、より一体感のあるイベントにすることができるでしょう。また、オンライン向けに個別のコンテンツを用意することで、参加者の満足度向上を図ることもできます。社内イベント・学会社内イベントや学会もハイブリッド開催に適したシーンと言えます。全国各地の拠点をつないだ社内イベントや、国内外の研究者が集う学会などでは、移動コストや時間的制約から参加が難しい人もいるでしょう。ハイブリッド形式を取り入れることで、場所や時間に関わらず、より多くの社員や研究者の参加が可能になります。会場の雰囲気を味わいながら、遠隔地からもリアルタイムで議論に参加できる環境を整えられるのです。株主総会株主総会は、企業にとって重要なイベントの一つです。しかし、遠方の株主や多忙な株主にとって、会場への出席は難しいこともあります。そこで注目されているのが、ハイブリッド形式の株主総会です。オンラインでの参加を可能にすることで、株主の利便性を高められます。同時に、会場の質疑応答の様子をリアルタイムで配信することで、オンラインであっても臨場感を味わいながら参加することができるでしょう。議決権行使についても、電子投票システムを活用するなど、柔軟な対応が可能になります。ハイブリッドイベントの実施パターンハイブリッドイベントの実施方法は、いくつかのパターンに分けることができます。ここでは、代表的な3つのパターンを見ていきましょう。会場+ライブ配信会場で開催するイベントの模様を、リアルタイムでオンライン配信するパターンです。会場の臨場感を、オンライン参加者にも伝えることができるでしょう。会場参加者とオンライン参加者の双方向コミュニケーションを実現するためには、チャット機能やQ&Aセッションなどを活用することが重要です。オンライン参加者の存在を意識し、適切に巻き込んでいく工夫が求められます。複数会場+ライブ配信複数の会場で同時開催するイベントを、相互にライブ配信で結ぶパターンです。遠隔地の参加者同士が、あたかも同じ会場にいるかのような一体感を生むことができるでしょう。複数会場をシームレスに連携させるためには、専門性の高い配信技術が不可欠です。また、各会場の進行や演出を綿密に調整することが重要になります。会場+オンデマンド配信会場で開催したイベントの模様を、後日オンデマンド配信するパターンです。会場に参加できなかった人にも、イベントの内容を届けることができるでしょう。オンデマンド配信では、視聴者が好きな時間に自由に視聴できる利便性が魅力です。一方で、リアルタイムの双方向コミュニケーションは難しいため、視聴者の興味関心を引き付ける、魅力的なコンテンツづくりが鍵を握ります。ハイブリッドイベント成功のためのポイントハイブリッドイベントを成功に導くには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。ここでは、そのポイントを4つに絞って解説していきましょう。明確な目的設定とKPI策定ハイブリッドイベントを開催する際には、まず明確な目的を設定することが大切です。イベントの目的は、主催者側の意図と参加者のニーズを反映したものでなければなりません。目的を明確にしたら、次はその目的達成のための具体的なKPI(重要業績評価指標)を策定します。KPIは、数値化可能で測定可能なものを選ばなければいけません。例えば、参加者数、満足度、コンバージョン率などが挙げられます。目的とKPIを明確にすることで、イベントの方向性が定まり、運営チームも一丸となって取り組むことができるでしょう。十分な準備期間の確保と適切なチーム体制の構築ハイブリッドイベントは、対面形式とオンライン形式のメリットを組み合わせた新しいイベント形式です。そのため、十分な準備期間を確保し、適切なチーム体制を構築することが求められます。準備期間は通常のイベントよりも長めに設定し、少なくとも2〜3ヶ月前から着手することをおすすめします。この間に、会場の手配、配信機材の調達、スケジュールの調整など、多岐にわたる準備を進める必要があります。また、ハイブリッドイベントでは、対面形式とオンライン形式それぞれに精通したスタッフが必要です。イベント運営、配信技術、デザイン、マーケティングなど、各分野のスペシャリストを集めたチームを構築することが理想的でしょう。専門性の高い配信対応ハイブリッドイベントでは、オンライン参加者にも会場の臨場感を提供することが求められます。そのため、専門性の高い配信対応が不可欠です。配信では、高画質・高音質のストリーミング、安定的なネットワーク環境、トラブルへの迅速な対応が重要なポイントとなります。可能であれば、経験豊富な配信業者に依頼することをおすすめします。また、オンライン参加者とのコミュニケーションを促進するツールの活用も効果的です。チャット、Q&A、投票機能など、双方向性を持たせる工夫を凝らしましょう。対面形式とオンライン形式の使い分けハイブリッドイベントでは、対面形式とオンライン形式のメリットを最大限に引き出す工夫が活きます。そのためには、両形式のバランスと使い分けを正しく行う必要があるのです。対面形式は、一体感、理解のしやすさ、深いコミュニケーションに優れています。一方、オンライン形式は、アクセシビリティの高さ、スケーラビリティ、データ収集の容易さが魅力です。イベントの目的や内容に応じて、両形式の比重を調整しましょう。また、オンライン参加者の満足度を向上させるために、会場の雰囲気を伝える工夫も大切です。カメラワークや音響効果など、オンライン参加者を意識した演出を心がけましょう。まとめハイブリッドイベントは、リアル開催とオンライン配信を組み合わせた新しいイベント形式です。コロナ禍で普及し、参加アクセシビリティの向上や会場キャパシティの制限緩和、緊急時の開催方式変更の柔軟性などのメリットがあります。一方で、運営負荷の増加や配信技術の複雑化、オンライン参加者の体験設計などの課題もあるでしょう。ハイブリッドイベントの実施には、明確な目的設定やKPI策定、十分な準備期間の確保、適切なチーム体制の構築、専門性の高い配信対応、対面形式とオンライン形式のバランスと使い分けが必須になります。ハイブリッドイベントの可能性を検討してみてはいかがでしょうか。